私が勤めていた美容外科では脇汗の治療法として
- 塗り薬(制汗剤)
- 注射薬(ボトックス注射)
- 手術(①吸引法 ②剪除法(せんじょほう) ③吸引法と剪除法の混合治療)
の計5種類を取り扱っていました。
また、他院ではこれに加えて「ミラドライ」という皮膚を切らずに医療機器で汗腺にダメージを与える治療があります。
今回は臭いの元となる汗腺を根本から取り除くことができる「③手術」に関してご紹介したいと思います。
手術が気になるけど費用や傷跡、手術後が大変など気になることが色々とあるかと思いますのでこの記事で少しでも疑問が解決できればと思います。
- 多汗症・わきがの原因
- 吸引法と剪除法のそれぞれの特徴について
- 手術の選び方
- 費用や保険適応など自由診療と保険診療の違いについて
- 脇汗手術のデメリット
制汗剤や注射薬が気になる方は下記記事がおすすめです。
この記事の内容
多汗症・わきがとは
人間の体には
- エクリン汗腺:全身に分布されていて主に体温調整をおこなっている。臭いは無臭。
- アポクリン汗腺:脇、下腹部、耳の穴など体毛が生えている部分に存在。汗自体は無臭。
の2種類の汗を分泌する腺があります。
この分泌腺によって多汗やワキガなどの症状がでます。
多汗症
①のエクリン汗腺の分泌が正常にコントロールできなくなることで通常よりたくさん汗が出る疾患を多汗症と言います。
その原因は体質だったり、ストレス、食生活、ホルモンバランスなど様々な要因が絡み合っておこると言われています。
わきが
②のアポクリン汗腺の数が多いと独特な臭いが放たれやすくわきがと言われ黄色い汗ジミの原因にもなります。
アポクリン汗腺から出る汗自体は無臭ですが皮膚表面で毛穴からでる皮脂と混ざり合うことで細菌が発生、通常の脇の臭いとは違う臭いを放ちます。
多汗症・わきがを治す手術の特徴
エクリン汗腺・アポクリン汗腺を取り除くのが多汗症・わきがの手術となります。
病院やクリニックによって手術のネーミングが違う場合もありますが、多くの美容外科・形成外科でおこなわれている脇汗手術は次の2種類があります。
- 吸引法
- 反転剪除法(反転剪除法)
①吸引法
吸引法は反転剪除法に比べると比較的簡単な施術になります。
脇の下に数ミリ程度の穴をあけて、カニューレと呼ばれる細い管でアポクリン汗腺を吸引して除去します。
メスを使わないため傷跡はほとんど残らないですし術後の腫れや痛みも次に紹介する剪除法に比べると少ないです。
デメリットとしてはエクリン汗腺はあまり除去できないため剪除法に比べると汗の量はあまり減らないことです。
- 臭いを軽減したい方
- 普段のお手入れを楽にしたい方
- 傷跡を残したくない方
②反転剪除法
脇の皮膚のしわに合わせて3〜4㎝ほど切開して、指で皮膚を裏返してドクターの目で汗腺を確認しながら少しずつハサミで取り除いていく方法です。
アポクリン腺、エクリン腺、毛根を取り除くことができます。
毛根も切除するため術後に脇の毛が薄くなるといった特徴があります。
確実に汗腺を除去できるため最も効果が高い手法ですが、術後のダウンタイムが長く大変なのと傷跡や皮膚の色素沈着が残るなどの欠点もあります。
- 脇汗の量が多い多汗症の方
- 臭いを軽減したい方
- 確実に効果を得たい方
また、上記の手術方法を組み合わせて中程度の多汗症・わきがの手術をおこなっているクリニックもあります。
手術の選び方
患者さんがよく悩まれてたのはどの手術を選んだら良いのか?ということです。
軽度の患者さんが剪除法を選んでわざわざ皮膚にダメージを与える必要はないですし、重度の患者さんが吸引法を選んで手術をしたのに脇汗や臭いが治らなかった!となったら大変なわけです。
ですので、脇汗の手術は自分に合った手術を選択することが大事で、多汗症・わきがの診断はとても慎重におこなう必要があります。
私が勤めていたクリニックではドクターと看護師の両方で臭いや汗の確認をおこなっていました。
しかし、汗というのは緊張によっても増えたりしますし、自分では普段すごく臭うと思っていても診察の時は臭わないということもあります。
ですので、診断が難しい場合は家族にも一緒にカウンセリングにきてもらうことをすすめていました。
自分だけの思い込みの脇汗・臭いで手術方法を選ばないことも大事です。
手術の費用は?保険適応となる基準は?
気になる手術費用ですが、自由診療ですとクリニックによって値段が変わってきます。
剪除法ですと20〜35万くらい、吸引法ですと15〜25万くらいのところが多いようです。
また、剪除法に関しては保険適応となる場合があり3割負担であれば5万円前後になる病院・クリニックが多いようです。
保険適応となる基準は?
まずは患者さんが脇汗手術の保険適応になるのか?を診断しなければなりません。
その場合は、脇汗手術の保険診療をおこなっている病院、クリニックで診断をしてもらいます。
ちなみに、ネットで「脇汗手術・全国の病院」などで検索するとでてきます。
診察方法としてはワキガの症状や家族のワキガの有無をきいたりするなどの問診や、ガーゼをしばらく脇に当てたものをドクターや看護師が嗅いで判断するなどの方法があります。
詳しくは上記の「脇汗 情報サイト」に載っています。
そして、最終的にはそのとき診察をおこなったドクターの判断ということになります。
ですので、症状が軽いとドクターが判断した場合は保険適応が認められないということです。
その場合は自由診療の手術やボトックす注射をすすめられることもあります。
しかし、先ほどもお伝えした様に「臭い」は客観的に程度を数値化することが難しく診察の状況によっても変わってきます。
A病院では「保険適応が認められなかった」としても、B病院では「保険適応が認められた」ということもありえます。
なので、保険診療にこだわる場合は複数の病院を受診するというのもありということです。
脇汗手術の自由診療と保険診療は何が違うのか?
脇汗の保険診療が認められたとしましたら、自由診療とどちらを選べばよいのか?悩むところだと思います。
まずは選べる手術が違うということです。
保険診療でおこなえる手術は剪除法だけです。
吸引法や混合方法などの施術を選びたい場合は自由診療となります。
また、傷跡を綺麗に直して欲しいという場合も自由診療をおすすめします。
保険診療の脇汗手術の目的は「汗の量や臭い」をとることでドクターは選べません。
そうしますと術後の傷をどこまでキレイにしれくれるかはドクターによって違ってくるということです。
美容外科の自由診療の脇汗手術ですと「脇汗の量や臭い」に加えて「キレイに治療する」ということも目的入ってきますので、術後の傷跡に関しては慎重におこないます。
特に女性の方で脇に目立った傷跡を残したくない方は自由診療のカウンセリングも受けることをおすすめします。
私の友人にも保険診療で剪除法を受けて、傷跡が酷く脇がでるノースリーブは着れなくなったという子がいます。(しかも2人)
脇汗や臭いの症状は治っているので満足は満足なんだけれど見た目が・・・といった感じです。
脇の傷跡はのちに美容外科でキレイにする手術を受けることもできますが、費用がかかりますので保険診療で安く済ませたのに結局高く付いたということにもなりかねないということです。
あとはクリニックによっても違いますが、接客やサービスも保険診療と自由診療では変わってきます。
自由診療なら予約制で誰にも会わずにカウンセリングにいくことができたりします。
ただ脇汗の保険診療をおこなっている病院は、以前は大学病院や総合病院が多かったのですが、最近は需要も増えて美容外科でも保険診療と自由診療の両方を取り入れているクリニックがあるようです。
そういったクリニックを選ぶというのも手かもしれません。
脇汗手術のデメリット・問題点は?
①脇汗・臭いの再発
手術のデメリットで患者さんが一番気になるのは脇汗・臭いの再発もしくは治らなかったということです。
脇汗の手術は汗腺を100%取り除くものではないので、個人差はありますが多少の汗や臭いは残ります。
しかし、明らかに改善していない場合は、手術が雑だったりして取り残しがあるという可能性もあります。
再発に関しても臭いの原因となるアポクリン汗腺は個人差はありますが再生能力があるため再発はすることはあります。
ですので診察のときにしっかりと再発や取り残しについても説明してくれるドクターなのか、信頼できる病院なのか見極める必要があります。
②術後のケアが大変
効果はあるが術後が大変というのが剪除法です。
私が勤めていたクリニックではこの剪除法と吸引法を組み合わせた方法が一番多かったです。
まず手術後、脇の下の皮膚が剥がれている状態になっていますので、圧迫固定をするために脇下にガーゼ等をたくさん詰めて包帯で巻きます。
さらに腕が上にあがらないように腕をテーピングなどで固定しますので、術後手術台から起き上がるのさえ困難です。
帰りは車の運転ができないためタクシーや家族の送り迎えで帰ることになります。
私だったら絶対に付き添いが欲しいと思いましたが、患者さんはまわりに内緒で手術する方もいたので一人でという方も多かったです。
抜糸までの7日〜10日くらいは腕を上げることはできませんし、脇を濡らすことができないので美容院でシャンプーしてもらっているという患者さんもいました。
もちろん痛みもあり大変なのですが、アフターケアーがその後の脇の皮膚の状態を決めますので綺麗に治すためにも万全の準備を整えてから手術を受けることをおすすめします。
③脇の色素沈着
皮膚へのダメージが大きいため脇に色素沈着を起こすことがあります。
通常はしっかりケアをすれば時間の経過とともに消えていきます。
しかし、体質によっては1年経ってもわきが黒ずんでいたりする場合があるため美白の外用剤を使ったりなど対処する必要があります。
まとめ
脇汗の手術について吸引法と剪除法の2種類を紹介しました。
私が勤めていた美容クリニックの内容となりますので、他院で違う処置や流れの場合もあると思います。
あくまでも1例として参考にしていただければと思います。
また、脇汗で悩んでいる方の中には深刻な方や精神的に落ち込んでいる方も多いです。
まずはカウンセリングだけでも大丈夫ですので、脇の悩みを話すだけでも気持ちが楽になるかもしれません。
また、他にも脇汗を抑える方法がありますので気になる方はチェックしてみてください↓